小池昌代のドローイング展

 目白のポポタムという小さな店で15日から19日まで小池昌代のドローイング展をやっていた。絵の描ける人なのである。たまたま上京の用事があって最終日に寄れた。彼女の公式ページ にもアップされてる絵が、だいたいA4判ほどのを中心に30枚以上あって、五千円から高くても二万円ほどの謙虚な値がつけられている。
 画風はいろいろである。居合わせた女性客は「佐野洋子さんのよう」と言っていた。なるほど。ひとことでまとめよ、と言われればそう答えるのがふさわしかろう。
 せっかく大阪から寄ったのだからと、あんまり高くないのを記念に二枚買った。公式ページのGallery コーナーにある「蛇髪(へびがみ)」と「葉子」である。前者は題名からするとメドゥーサなんだろうが、彼女が描いたのは素朴で健康そうな女性像だ。対して、後者は妖しく微笑む童女のようだ。小池昌代の穏やかに秘める二面性を感じた。
 1995年2月20日から2000年11月15日まで十四号でた個人誌「音響家族」も四冊置いてあった。見ると、そのカットに使われた絵が今回はずいぶん出展されているようだった。ひとつ二百円だというから買い占めてしまった。第二号には「岸上さんの誕生日」があった。『屋上への誘惑』(2001)の印象的な一篇だ。帰阪して読み比べるのが楽しみである。
追記。田辺聖子の今昔物語』に「蛇髪の妻」というのがあるらしい。これは読んでない。もし、それが『今昔物語集』巻三十一第十をもとにした話で、小池昌代の絵もこれを描いたと考えると、主題は嫉妬ということになる。追記。たしかに巻三十一第十でした。あとは小池昌代本人に訊くしかないか。追記。問い合わせた。でも、返事をくれるような人ではなかった。追記。でも年賀状をくださった。