2009-01-01から1ヶ月間の記事一覧

睦月の一番、群像1月号、多和田葉子「ボルドーの義兄」

文芸誌をこつこつ読んでみる、なんてことを二十年ぶりほどにやった。感想としては、昔より面白くなってるのではなかろうか。また、異国が舞台になっていたり、異国人が登場したりする作品も多い。つまり、私は日本語で読んでいるけど実際は外国語で語られて…

早稲田文学2号(08年12月)、特別付録DVD、川上未映子「戦争花嫁」朗読

ずっと昔に授業で聞いただけで検証してはない。大正の始まるころの新聞は漢文調が主だったそうだ。例外はあって、それは新聞小説だった。そして、その文体がだんだん他の紙面に広がって現在のようになったそうである。 ダンテがイタリア語を作り、ルターがド…

群像1月号、松浦寿輝「川」

1993年の第四詩集『鳥の計画』の後書で、松浦寿輝は『吃水都市』ほかの詩集が「数年のうちに刊行されるだろう」と述べている。実際は昨年の暮にやっと『吃水都市』が出た次第である。何年も第五詩集を私は待ち、ある日、松浦が小説家に転向したのを知った。…

ETV特集、2009年1月4日、吉本隆明 語る 〜沈黙から芸術まで〜

吉本隆明『言語にとって美とは何か』(1965)は最初の三章がとても面白く、たいへんよく読んだ。論理的に大きな欠陥を持つ本ではある。無関係な二つの言語観が混在しており、それを作者が自覚せずに一つの言語理論として語るものだから、読者は混乱してしまう…

文学界1月号、水村美苗

水村美苗『日本語が亡びるとき』の冒頭三章が、出版に先行して昨年の「新潮」9月号に掲載されたとき、夢中で読んだ私だったが、ここまで話題になるとは思わなかった。十月に出て、こないだ書店で奥付を見たらすでに五刷であった。 この本には、ふたつの現状…