2009-05-01から1ヶ月間の記事一覧

皐月の一番、第19回日本詩人クラブ新人賞、斎藤恵子『無月となのはな』

初耳の賞だが、おかげで素晴らしい詩集と巡り合えた。新人賞とはいえ、すでに詩人には三冊目の詩集である。また、授賞式の写真の印象では五〇代後半のようだ。そうしたこともあってか、作品は見慣れた手法の組み合わせである。もともと私は、「新しい時代の…

群像5月号、磯崎憲一郎「絵画」

いくつかのブログで磯崎憲一郎「絵画」が好評である。よくわからないまま読み抜けてしまった私だが、読み返す気になった。すると、やっぱりわからない。不思議である。同じ作家が「新潮」六月号に「終の住処」を書いている。こっちは普通のスタイルだった。…

すばる5月号「文芸漫談」奥泉光いとうせいこう「後藤明生『挟み撃ち』を読む」

私にとって、後藤明生というと『挟み撃ち』(1973年)の作家であり、なんでそうかというと、蓮實重彦の熱烈な頌があるからである。1975年初出で後に『小説論=批評論』所収の「『挟み撃ち』または模倣の創意」がそれだ。一言だけ引用すると、主人公の「わた…

イーストウッド『グラン・トリノ』、蓮實重彦

ある町に、ならず者の集団がいる。そして、正しく生きようとしてる家の姉弟を脅かす。ここで昔ながらのアメリカ映画なら、ヒーローの登場である。ならず者を皆殺しにして、最後に「おれはもうこの町にいられねえ」とか言って去ってゆく。では現代映画なら?…

中央公論5月号、西部柄谷対談「恐慌・国家・資本主義」

西部邁と柄谷行人の対談を読んだ。二人の経歴をくだくだ言う必要は無かろう。柄谷はこれまでの持説を話題に応じて引き出している。それらのほぼすべてに西部が同意して、「柄谷さんとぼくはたぶん感覚が似ている」と述べていたのが印象的だった。「表現は違…

新潮昨年10月号、東浩紀「ファントム、クォンタム」、連載第三回

私は苦手分野について嫁にいろいろ教わっている。彼女は腐女子なのである。彼女に頼んで、東浩紀が『ゲーム的リアリズムの誕生』で言及している「Air」をやらせてもらった。すると、「往人」がその登場人物であった。「Clannad」も見せてもらった。「風子」…

新潮昨年8月号、東浩紀「ファントム、クォンタム」、連載第二回

村上龍がホスト役を務めたテレビ番組「Ryu's Bar 気ままにいい夜」の最終回に柄谷行人が出た。1991年3月である。最後の数分の話題が「生まれ変わったら何になりたい?」だった。柄谷は、私の記憶そのままに再現すると、「何にも生まれ変わりたくない。いま…