2011-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「新潮」八月号、柄谷行人「哲学の起源(2)」

第三章 イオニア自然哲学の背景 イオニアの思想は自然哲学だった、と哲学史では解説される。それが含意するのは、イオニア哲学は未発達で、まだ人間の内面や倫理を問題にできなかった、ということだ。それはありえない、と柄谷行人は考える。 1自然哲学と倫…

「毎日新聞」三月三一日、田中和生「文芸時評」

田中和生が毎日新聞の文芸時評で言い続けていることがぴんとこない。一言で言えば、リアリズムの勧めである。三月三一日のが最初で、これだけでも最低限の主張はわかる。東日本大震災があり、福島の原子力発電所の事故が起きた、それによって、 どんな地震が…

奥泉光『シューマンの指』(その1)

シューマンの不思議を言うと、名曲は無い。名演奏がたくさんある。ピアノ五重奏曲のような優等生的「おクラシック」が、バリリとデムスの共演によってめでたく響くことに私は感嘆してきた。ショパンなら、曲が優等生的な場合は演奏も多くはそんなもんだ。奥…

ナターシャ・グジー

東北の地震があってしばらくしたら、同僚がナターシャ・グジーの動画を教えてくれた。ネットで話題になっていたらしい。三年前のテレビ放送である。なのに、言葉と歌詞がいまを予言しているとしか思えない。私はもう彼女の意味づけを抜きにしてこの歌を聴く…

柄谷行人「哲学の起源」(1)「新潮」7月号

第一章「普遍宗教と哲学」 普遍宗教については『世界史の構造』で説明された。私の要約では11/07/27 のあたりだ。簡単に言えば、政治権力と貨幣経済のもたらす不自由や不平等に対抗するため、それらの無かった共同体の時代を現代的に回復しよう、という運動…