2009-04-01から1ヶ月間の記事一覧

卯月の一番、群像4月号、ジュリア・スラヴィン「歯好症」

岸本佐知子が「変愛小説集2」と題して連載している短編翻訳の第四回作品である。第二回のマーガレット・アトウッド「ケツァール」も面白かった。互いの嫌味さえすれ違っているので表面上はたんたんとした倦怠期に見える、という夫婦をあっさり書いている。 …

現代詩手帖4月号、座談会「突破口はどこにあるか」

かつての「ユリイカ」も1969年になると六〇年代詩人の特集を組んだ。「現代詩手帖」も同じだ。四月号の特集は「ゼロ年代詩のゆくえ」である。水無田気流、中尾太一、蜂飼耳、岸田将幸、佐藤雄一の座談会を読んだ。本題の「突破口はどこにあるか」よりも「ゼ…

新潮4月号、アジアに浸る、第七回

SIA(サイア)という九州大学のプロジェクトがあるそうだ。簡単に言うと、高樹のぶ子がアジアの十ケ国を訪れて現地の文学に触れるものだ。〇六年に始まってすでに七ケ国が済んでおり、「新潮」では、高樹の交流した作家と高樹の作品を解説付きで掲載している…

新潮昨年5月号、東浩紀「ファントム、クォンタム」、連載第一回

昨年の「新潮」五月号から東浩紀は小説「ファントム、クォンタム」の連載をほぼ隔月で続けて、いま六回まで発表している。題名を訳せば、「亡霊、量子」か。作者のブログでは「あと連載2回で終わり」(09/02/27)とのこと。いまから読み始めて最終回までに…

塚本邦雄(その2)、短歌の終り

楠見の本のまえがきによると、「歌は滅びた、というのが、中年以降の塚本邦雄の考えであった」。調べると、『詩歌宇宙論』(一九八〇)所収の「明日を語らば」に当たった。「一九六〇年にその後二十年を占つた人人の中には(略)画期的な俊才、若い桂冠詩人…

塚本邦雄(その1)、楠見朋彦『塚本邦雄の青春』

あとがきに「本書はいわゆる評伝ではない」と書いてある。そこにもちょっとひかれて楠見朋彦『塚本邦雄の青春』(2月)を読んだ。ところが、標準的な評伝であった。太平洋戦争中の昭和十八年あたりから、『水葬物語』が三十一歳の昭和二十六年に刊行され、…

第50回毎日芸術賞、吉増剛造『表紙 omote-gami』

現代詩の終りはいろんな風に実感できる。たとえば、一年ぶんの「現代詩手帖」を並べてみれば、特集される詩人はとっくに偉大か、亡くなっているかだ。正確には「現代詩史手帖」と呼ぶべきか。私だって新しい人を特集する方が面白いとは思ってない。昔の人を…