2009-10-01から1ヶ月間の記事一覧

神無月の一番、なかにしけふこ『The Illuminated Park』

副題は「閃光の庭」。これが第一詩集らしい。古風な、どことなく定型句めいた言葉遣いが目立つ。形式感も備えた詩人で、読んでいると、賦とか、頌とか、私の頭にはそんな実はよく知りもしない用語が浮かんでくる。「エクピュローシス」なんて言葉を初めて聞…

書き直された『ヘヴン』(その4)

今回が最終回。いままで同様、削除された部分、追加された部分、私のコメント、である。 「情熱大陸」で紹介された改稿部分も記しておこう。6章177ページ。地獄があるとしたらここだし、天国があるとしたらそれもここだよ。ここがすべてだ。そしてそんなこ…

書き直された『ヘヴン』(その3)

最後まで終わらなかった。8章の途中まで。前回同様、削除された部分、追加された部分、私のコメント、である。ところで、川上未映子が出演してる映画「パンドラの匣」が気になるのだが、「パビリオン山椒魚」の監督の作品だと知って二の足を踏んでいる。テ…

書き直された『ヘヴン』(その2)

続きを。前回同様、削除された部分、追加された部分、私のコメント、である。 6章152ページ。死を思う主人公。 そしていまもこの瞬間に死んでいる人が確実にいるということを想像してみた。これはたとえ話や冗談や想定じゃなくて、本当のことなんだと、そう…

書き直された『ヘヴン』(その1)

今月に出た「文学界」「文芸」「すばる」「新潮」の全部に『ヘヴン』の書評が載っていた。しかし、そのどれも、作品を理解するという点では読むに値しない。ネットでもいろいろ読んだ。私が気になったのは、作者自身のブログ「川上未映子の純粋悲性批判」090…

『1Q84』まつり、補遺。

『1Q84』のガイド本をさらに三冊読んだのでざっと。洋泉社MOOK『「1Q84」村上春樹の世界』は一番便利だった。地図とか写真とかあって資料集として使える。これだけは買ってあげた。村上春樹研究会『村上春樹の『1Q84』を読み解く』は急いで作った雑な本。5…

去年と今年の新潮新人賞、特に選評

飯塚朝美は三島由紀夫っぽい。いまどき珍しい本格志向である。昨年に新潮で新人賞を獲った「クロスフェーダーの曖昧な光」には『金閣寺』が使われていた。この時の選評は後に「群像」の「侃侃諤諤」でも話題になったように、ほとんどの選考委員がとげとげし…

閑話。

結婚してからわかったのだけど、嫁は鉄子なのであった。テレビに映った小海線に私が興味を示した瞬間を見逃すわけは無い。ぱたぱたっと宿と列車が手配されて、当日は朝の五時に堺を発ち、連休初日の午前中には私たちは小淵沢のホームに立っていたのである。…

「新潮」10月号、朝吹真理子「流跡」ほか。

これまで私は十三回も東浩紀「ファントム、クォンタム」について書いてきた。うまく読めてないからそうなる。量子脳やSFの素養が無さすぎるのが一因かなあと思って、ペンローズやイーガンを読んだ。読後感は、「理系方面をマニアックに読み込んでも、『新…

「ミステリーズ」33,35,36、東浩紀「押井守とループの問題」

押井守は好きだ。昨年の『スカイ・クロラ』は二度見た。DVDでも見直した。『天使のたまご』や『御先祖様万々歳』第1話2話をさしおいて、これを彼のベスト1に挙げたい。救いようの無い閉塞感の中でたんたんと結末まで進行するところが良い。 嫁が森博嗣の…

芥川龍之介「蜘蛛の糸」

芥川龍之介「蜘蛛の糸」(1918)は子どもの頃から不可解な話だった。それは専門家もよく言ってることである。例によって「蜘蛛の糸」にも種本があって、それと比較するとわかりやすい。 ケラスというドイツ人の『カルマ』(1894)が種本である。それをトルスト…