永井均
「『ヘヴン』をめぐる哲学対話」と題されている。今頃になって知って読んだ。『ヘヴン』の書評や対談をずいぶん読んだけど、これが一番よく議論されている。私が見つけた新聞や文芸誌の書評はすべて百瀬やコジマを中心に書かれていて、それがとても不満だっ…
文庫化にあたって巻末に加えられた永井均と川上未映子の対談は、やはり面白かった。まづ、断片的な例からいくつか挙げてみよう。「ニーチェを読んで元気が出るような人間ではダメだ」なんて発言が出てくる。これが何を意味しているかは前回に書いた。また、…
二十年前ほどのニーチェの解説書というと、多くはニーチェの生涯に紙幅を費やすばかりで、思想については通り一遍のことしか書いてなかった。結局、一番便利なのはドゥルーズ『ニーチェと哲学』(邦訳1974年)だ、と言うしか無かったのが私の実感である。状…
これまで私は十三回も東浩紀「ファントム、クォンタム」について書いてきた。うまく読めてないからそうなる。量子脳やSFの素養が無さすぎるのが一因かなあと思って、ペンローズやイーガンを読んだ。読後感は、「理系方面をマニアックに読み込んでも、『新…
7月12日の毎日放送「情熱大陸」で「ヘヴン」の難産ぶりが紹介されたこともあって、「群像」八月号はすぐ売り切れてしまった。新聞の時評も好意的だったようである。当然「群像」は九月号の「創作合評」でたっぷり扱い、十月号には作者のインタヴューも載っ…
前回はパシヴァとレシヴァ、ドウタとマザの関係から作品全体を整理した。この小説の考えやすい部分だ。難しいのは1Q84と1984の関係である。リーダーはそれを並行世界(パラレルワールド)とはとらえていない。1984年の世界は「もうどこにも存在しない」と彼…