2011-02-01から1ヶ月間の記事一覧

如月の一番「文芸」冬号、大森兄弟「まことの人々」

私がもたもたしてるうちにとっくに単行本になっていた。初出で読んでおく。改稿の有無は調べてない。 男子大学生の一人称小説で、彼が付き合っている女子大生が話題の中心である。彼女は演劇をやっており、「まことの人々」という劇で「エドモン軍曹」を演じ…

二〇一〇年「すばる」十二月号、荻世いをら「筋肉のほとりで」

ひとつめ、清潔や健全を究めると邪悪や醜悪が滲み出てくる。ふたつめ、現在とは別の世界や過去にあった可能性が頭から離れない。このふたつが小説でわりと流行ってる傾向である。どちらも読める代表は『1Q84』だ。そのずっと前から村上春樹はこの主題を…

二〇一〇年「すばる」十二月号、田中慎弥「第三紀層の魚」

私の部屋には、読んでない本の塔が複数ある。読書量の低下は前にも書いたとおりだ。塔の中に昨年の「すばる」12月号があった。買ってたんだ。田中慎弥「第三紀層の魚」と荻世いをら「筋肉のほとりで」を読むつもりだったのである。さっそく田中から読んだ。 …

小島信夫『漱石を読む』(一九九三)、佐藤泰正『これが漱石だ』(二〇一〇)

ひさしぶりに『明暗』を読みたい、なんて思いついた。どこが日本近代文学の最高傑作なのか、私にはよくわからん小説である。『道草』の方が素敵ぢゃないの、と思ってきた。いますぐ読み返したら同じ感想を得るだけだろうから、ちょっと予習しよう。昨年に出…