2011-10-01から1ヶ月間の記事一覧

「新潮」十一月号、柄谷行人「哲学の起源」(5)

第五章 イオニア没落後の思想(2)「3パルメニデス」 パルメニデスは「有るものは有る、有らぬものは有らぬ」で知られる。エレアのゼノンはその弟子で、アキレスと亀の逆説で知られる。柄谷行人はこの二人をワンセットで考えてパルメニデスを論じた。する…

「新潮」十一月号、長谷川郁夫「吉田健一」(第一回)

吉田健一はなかなか読み切れない。文章が読みづらくていけないのだ。たまに読むと10/03/14 に書いたように、私は感激する。長谷川郁夫が彼の評伝を「新潮」で連載し始めた。来年の生誕百年に合わせたのだろう。長谷川は小澤書店の社長だったから吉田と付き合…

川上未映子『すべて真夜中の恋人たち』(2)

一九日の「読売新聞」夕刊に川上未映子のインタヴューが載った。『すべて真夜中の恋人たち』について、こんな質問を受けている、「今作では「光」が重要なモチーフになっていますね」。未映子の答えはこうだ。 見えるものと見えないもの、今あるけれどいずれ…

「文芸」夏号、中村文則「王国」、「群像」5月号、伊坂幸太郎「PK」

文学がキャッチコピーみたいになってる。問題を提出するのが文学の仕事だろう。なのに、「人生を三〇字以内でまとめよ」みたいな模範解答でオチをつけようとする。そんなオチ無しでも作品は仕上がったのではないか、と思う。解答を据えないと気の済まない作…

「新潮」10月号、柄谷行人「哲学の起源」(4)

第五章 イオニア没落後の思想 イオニアのイソノミアはリディアやペルシアの支配を受ける以前に崩れていた。イソノミアの維持は難しい。むしろイソノミアは失われた後に見出されるほどのものである。イソノミアを回復しようとする思想は、維持の難しさや崩壊…

「群像」六月号、川上弘美「神様2011」

川上弘美のデビュー作は、「くまにさそわれて散歩に出る」という彼女らしい奇妙な書き出しの「神様」で一九九三年の発表である。人語をあやつる熊で、しかもジェントルだ。のんびりと散歩がこなされ、目的地の川原に到着する。そのとたん、熊に野性がよみが…