2009-02-01から1ヶ月間の記事一覧

如月の一番、すばる2月号、千頭ひなた「翅病」

今月の一番には「すばる」から千頭ひなた「翅病」を選ぼう。同棲相手の女性ナオを看病する若い男性奥田の話である。相手の症状は、まづ手にしびれがきて、だんだん動きが鈍くなり、意識まで固まって自分が自分である感覚も失われていく。パーキンソン病に似…

2月号、新潮、橋本治「巡礼」、群像、吉村萬壱「不浄道」

私が以前に文芸誌をよく読んでいた二十年ほどの昔は、ちょっと現代的な感じを出そうとしてる小説には、ゲイと右翼がよく登場していたものだ。これからの小説に流行るのはゴミ屋敷、部屋を汚す女かもしれない。楊逸「ワンちゃん」にもちらっと出てくる。そん…

文学界2月号、鹿島田真希「パーティーでシシカバブ」

柄谷行人が、「最近の若手批評家」の傾向として、「他人がどう思うかということしか考えていないにもかかわらず、他人のことをすこしも考えたことがない、強い自意識があるのに、まるで内面性がない」と述べている(『近代文学の終り』2005)。東浩紀などが…

第14回中原中也賞、川上未映子『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』

川上未映子『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』が中原中也賞をとった。大好きな一冊に光が当たってうれしい。収録作の中でも「ちょっきん、なー」がオススメである。でも、あれって詩集だったんだ。萩原朔太郎においてすでに詩と散文は見分けがつかな…

新潮2月号、野田秀樹「パイパー」

戯曲である。先月にシアターコクーンで上演されていたらしい。chez sugi に適切な紹介と感想があった。結末あたりの台詞が象徴的だったのでメモだけ残しておく。 ワタナベ「ああ、死んだふりだ。でも今までだって、生きたふりだ。終わろうとしている世界を、…

文学界2月号、ドナルド・キーン「日本人の戦争」

真珠湾から敗戦後までに書かれた日本人の日記を、主に小説家を中心に読み解いた四〇〇枚の長編である。この手の日記で有名な永井荷風、高見順、山田風太郎はもちろん、伊藤整や吉田健一などほかにもたくさん引用されている。新事実や新資料の発見はほとんど…

2月号の蓮實重彦、新潮、「随想」、ユリイカ、「時限装置と無限連鎖」

世界経済の危機である。マネーゲームが経済を狂わせてしまった、それが現代の資本主義の問題だ、とよく聞く。しかし、昔からのことではないのか。昭和初期の金解禁に乗じたドル買いはマネーゲームに思える。幕末の金貨流出もマネーゲームに思える。もちろん…