「新潮」7月号、討議「東浩紀の11年間と哲学」

東京大学で行われたシンポジウムの記録である。東浩紀と『アンチ・オイディプス草稿』の共訳者、國分功一郎と千葉雅也が、『クォンタム・ファミリーズ』を、『存在論的、郵便的』の続編として読めるという観点から論じ合った。この線で初めて語り合えるまと…

「文学界」6月号「「私」の生まれる場所」千葉一幹

川上未映子『ヘヴン』論である。副題は「『ヘヴン』あるいは社会学の臨界点としての文学」だ。意図は明瞭だ。現代批評における「社会学の優位」への対抗である。この点にしぼって紹介しておく。 「『ヘヴン』はいじめを主題にした小説である」という。あたり…

二〇〇九年の一番

あっちこっちの新聞で、書評家さんたちが今年のベスト3とか2009年の回顧とかなさっている。思ったのは、鹿島田真希『ゼロの王国』を読まずにいたのは手抜かりであった。そうか『白痴』を素材にしてるのか。そりゃ読もう。せっかくだから私も。2009年の収穫…

如月の一番、すばる2月号、千頭ひなた「翅病」

今月の一番には「すばる」から千頭ひなた「翅病」を選ぼう。同棲相手の女性ナオを看病する若い男性奥田の話である。相手の症状は、まづ手にしびれがきて、だんだん動きが鈍くなり、意識まで固まって自分が自分である感覚も失われていく。パーキンソン病に似…