2010-02-01から1ヶ月間の記事一覧

如月の一番「新潮」2月号、福永信「午後」

今年の二月号は低調かと思ったが、先月の福永信「一一一一」を読んだ後では、「新潮」の「午後」に当然期待する。そして、とても良かった。まだ知名度の低い作家たちの中では私のイチ押しになった。偽日記@はてなによると、「「新潮」二〇〇七年十二月号の「…

国立国際美術館「絵画の庭−ゼロ年代日本の地平から」展

通勤中にポスターを見かけて興味を持った。毎日新聞で高階秀爾が好意的な評を書いている(2月18日)。これが決め手で見に行った。若手を中心に二十八人の作品が二百点ほど。全体としては大学美術部の合同展のようだった。素人くさい。小説も美術も似たよう…

大江健三郎『水死』第一部、第二部

まだ読み終わらないの?と嫁に言われてしまった。大江健三郎『水死』である。十二月に出てすぐ買ったんだけどな。やっと第二部を終わったところである。大江の小説は私にはとても読みづらいのだ。たとえば、『万延元年のフットボール』で言うと、弟が感激を…

「思想地図」vol.4、宇野常寛「ポスト・ゼロ年代の想像力」冒頭

物語批判は古い、と宇野常寛は「思想地図」第四号の「ポスト・ゼロ年代の想像力」で述べている。相も変わらず物語批判を奉じている例として「早稲田文学」を挙げた。彼はこれを「文壇のキューバ」と呼んでるそうだ。しかし、たとえば、ムーア『シッコ』に描…

補足二冊。特に斎藤環『文脈病』(1998)

前に言及しただけで気になっていた二冊について。10/01/27の『女流文学者会・記録』は、ざっと読んだだけでたいしたことなかった。少なくとも、「特筆すべき記録本」は言いすぎ。女流作家の立場についての証言なら、たとえば、瀬戸内晴美「極楽とんぼの記」…

吉田秋生『海街(うみまち)diary 3』

漫画を読まなくなって何年もたつが、これだけは買っている。第一巻が2007年、第二巻が2008年、そして第三巻がやっと出た。鎌倉に姉妹だけで暮らす家族が主人公だ。『BANANA FISH』のような波乱は絶対に無い。しみじみほのぼの小ぢんまりとした作品である。鶴…

「IN★POCKET」12月号「対談:永井均X川上未映子」

「『ヘヴン』をめぐる哲学対話」と題されている。今頃になって知って読んだ。『ヘヴン』の書評や対談をずいぶん読んだけど、これが一番よく議論されている。私が見つけた新聞や文芸誌の書評はすべて百瀬やコジマを中心に書かれていて、それがとても不満だっ…

鈴木志郎康『攻勢の姿勢 1958-1971』

私は『罐製同棲又は陥穽への逃走』(1967)と『詩集家庭教訓劇怨恨猥雑篇』(1971)は持っている。鈴木志郎康というとこの二冊だし、これは初版本で読まないと意味通じないでしょ、と言いたい。しかし、『罐製』が見つからない。ので、自慢計画は中止する。 …

早稲田文学、第三号、斎藤環「コドモと文学」

ぶあついわりに中味の薄っぺらいのが「早稲田文学」である。第3号は表紙が目立つ。沈んだ目つきの中年男性が、本の多い部屋に幼女を引きこんだところだ。ひとつページをめくると、どうやら彼は幼女を公園で誘ったらしい。鋭い視線だ。さらにページをめくる…

十年前の「文学界」2月号を読んだ

明治初期の国学系雑誌「大八州学会雑誌」というのを読んだことがある。大森貝塚の発見などによって歴史の考え方が大きく変わる時代だ。しかし、大八州学会はそんなこと認めない。ざっと要約すると、「古事記や日本書紀のありがたい書物と、土の中からいまさ…