村上春樹

二〇一〇年「すばる」十二月号、荻世いをら「筋肉のほとりで」

ひとつめ、清潔や健全を究めると邪悪や醜悪が滲み出てくる。ふたつめ、現在とは別の世界や過去にあった可能性が頭から離れない。このふたつが小説でわりと流行ってる傾向である。どちらも読める代表は『1Q84』だ。そのずっと前から村上春樹はこの主題を…

睦月の一番、村上龍『歌うクジラ』(まだ読み始め)

宮台真司が誰かとの対談で「子育てしてると二割は仕事量が減る」みたいな発言をしていた。「勉強量」だったかな。よくまあ二割で済んだ。私の子育ては、一年目が終わろうとしたところで順調なペースがつかめてきており、それは要するに、読書量を四割は減ら…

「考える人」夏号、「村上春樹ロングインタビュー」(その2)

1日目に言われたとおりに『1Q84』Book3 をゆっくり読み返してる。たしかにあんまり嫌うのは悪い気がしてきた。インタヴューは2日目と3日目も読んだ。主に、前者は生い立ちや読書経験について、後者はアメリカで成功する経緯について。どちらも良いこ…

新潮昨年5月号、東浩紀「ファントム、クォンタム」、連載第一回

昨年の「新潮」五月号から東浩紀は小説「ファントム、クォンタム」の連載をほぼ隔月で続けて、いま六回まで発表している。題名を訳せば、「亡霊、量子」か。作者のブログでは「あと連載2回で終わり」(09/02/27)とのこと。いまから読み始めて最終回までに…

すばる3月号、ル・クレジオ「逆説の森のなかで」、2月の村上春樹、エルサレム賞記念講演

ル・クレジオがノーベル賞をもらった。星埜守之訳「逆説の森のなかで」は昨年十二月七日の受賞記念講演である。「逆説の森」はダーゲルマンの言葉で、「飢えた人々のためにこそ書きたいと望んでいたというのに、彼の存在に気づくのは結局、充分に食べ物のあ…

文学界1月号、水村美苗

水村美苗『日本語が亡びるとき』の冒頭三章が、出版に先行して昨年の「新潮」9月号に掲載されたとき、夢中で読んだ私だったが、ここまで話題になるとは思わなかった。十月に出て、こないだ書店で奥付を見たらすでに五刷であった。 この本には、ふたつの現状…