小池昌代『怪訝山』

『転生回遊女』と比べれば、いまのところ、やっぱり小池昌代は短編が良い。「木を取る人」(二〇〇四)、「あふあふあふ」(二〇〇六)、「怪訝山」(二〇〇八)の三篇が収録され、どれも良い。 菅野昭正は文芸時評で「木を取る人」を好意的に評価していた(…

現代の小説は

映像文化の隆盛が活字文化を衰退させる。そんな見方に対して、ある評論家の時評が言っていた、「私は映画やテレビにくらべて、小説の運命を云々する外在的な議論を好まぬのである。映画やテレビが発達すればするほど、そういうものでは代置しがたい小説独特…

NHK総合テレビ6月20日、「川の光」

原作があり、同じ題名で松浦寿輝の児童文学である。本になったのは2007年だ。川を住みかとしていたクマネズミの親子が、河川工事で追われてしまい、新天地を求めて旅に出る。これをNHKが「SAVE THE FUTURE」という環境番組キャンペーンの一環としてアニメ…

塚本邦雄(その1)、楠見朋彦『塚本邦雄の青春』

あとがきに「本書はいわゆる評伝ではない」と書いてある。そこにもちょっとひかれて楠見朋彦『塚本邦雄の青春』(2月)を読んだ。ところが、標準的な評伝であった。太平洋戦争中の昭和十八年あたりから、『水葬物語』が三十一歳の昭和二十六年に刊行され、…