ナターシャ・グジー

 東北の地震があってしばらくしたら、同僚がナターシャ・グジー動画を教えてくれた。ネットで話題になっていたらしい。三年前のテレビ放送である。なのに、言葉と歌詞がいまを予言しているとしか思えない。私はもう彼女の意味づけを抜きにしてこの歌を聴くことは不可能になってしまった。昔の預言者ってこういう人だったんだろうなあ。未来を語る人であるよりは、古くからの聖典を読み換えさせる人なのである。もう去年までの聴き方ができない。またそれが本当の読み換えなんだろう。否応も無く変えられてしまう。それに比べたら、気鋭の論客が新解釈によって定説を意欲的に読み換える、なんて強引な勧誘商法みたいなものだ。
 何枚かCDを買ってますます好きになった。CDブック「ふるさと」収録の「ふるさと」をおすすめしておく。「いつの日にか帰らん」なんて、彼女で聴くとチェルノブイリやフクシマとどうしても関連させてしまう。そして他人事とは思わせない。こないだ、人権講演会にあわせた無料のコンサートが近所であり、動画だけではわからなかった明るい人柄に触れることができた。たくさんのことが折り重なった底の方から顔を出して会場の笑いを誘う明るさである。動画の歌も披露してくれた。語りも動画そのままである。各所で繰り返し語り続けているのだろう。たしかに、一番大事なことはワンパターンを恥じずにいつも何度でも繰り返して語るべきである。