江藤淳

十一年前の江藤淳追悼特集を読んだ

あれ?っと、今年になってから思い出した。昨年は江藤淳没後十年だったのでは。主要文芸誌にその種の記事を見た記憶が無い。いまさら悲しくなって、亡くなった当時の「新潮」「群像」「文学界」といった追悼特集を読んだ。晩年だけでなく若い頃のエピソード…

閑話(その1、逆説の消失)

二十数年ぶりに江藤淳『成熟と喪失』(一九七八)を読んだ。最初の方、安岡章太郎『海辺の光景』を論じたあたりである。いつまでも子離れできない母親が子を成熟させない、それが日本的な母子関係であると江藤は考えた。『海辺の光景』は格好の素材だ。ただ…

江藤淳『夏目漱石』冒頭

吉本隆明との対談で古井由吉が江藤淳について、こんなことを言っている。「江藤さんの漱石追究も、最初にこれが小説といえるんだろうかっていう疑念を踏まえていると思います。そこがすぐれたところだと思います。で、なおかつ小説だと解き明かすところが」…

新潮昨年8月号、東浩紀「ファントム、クォンタム」、連載第二回

村上龍がホスト役を務めたテレビ番組「Ryu's Bar 気ままにいい夜」の最終回に柄谷行人が出た。1991年3月である。最後の数分の話題が「生まれ変わったら何になりたい?」だった。柄谷は、私の記憶そのままに再現すると、「何にも生まれ変わりたくない。いま…