吉本隆明

新潮10月号、特別対談「書くことと生きることは同じじゃないか」

吉本隆明とよしもとばななが対談している。一か所だけ、吉本の発言が、読んでいて「ああそうだったか」と昔の彼を思い出させてくれた。 家族や親族というのは、本来一人の男性と一人の女性の性的なつながりから発展した集団で、これは他のどんな社会集団とも…

「新潮」7月号「昭和以降に恋愛はない」大江麻衣(その2)

何度も「夜の水」を読み返した。三月六日のTwitter を見ると、高橋源一郎が「夜の水」を「ここ数年読んだ詩の中で、№1の面白さだと思う」と激賞する要点は、これが「本邦初のガールズトーク詩(?)だったかも」、「「女の子」じゃなく「女子(じょし)」が、これ…

「現代詩手帖」二月号の討議から

吉本隆明が『日本語のゆくえ』(2008)でゼロ年代の詩を評し、「「過去」もない、「未来」もない。では「現在」があるかというと、その現在も何といっていいか見当もつかない「無」なのです」と言った。結構話題になったらしい。一昨年まで私は寝ぼけていた…

六〇年代や七〇年代を語る三冊

初期の吉本隆明をまとめて読んだとき、もう具体的には思い出せないが、批評と批評の間で言ってることが矛盾しており、何度か戸惑った。すが秀実『吉本隆明の時代』(2008)はそれを、六〇年代の論戦を勝ち抜くための戦略的な変わり身として分析してくれた。…

ETV特集、2009年1月4日、吉本隆明 語る 〜沈黙から芸術まで〜

吉本隆明『言語にとって美とは何か』(1965)は最初の三章がとても面白く、たいへんよく読んだ。論理的に大きな欠陥を持つ本ではある。無関係な二つの言語観が混在しており、それを作者が自覚せずに一つの言語理論として語るものだから、読者は混乱してしまう…