世界史の構造
読むことをめぐる佐々木中の第三夜は、イスラム教の教祖ムハンマドについて語る。ムハンマドの最初に受けた啓示とは「読め」だった。そして、佐々木が強調するのはムハンマドの特殊性である。法の起源に関するフロイトの説明と対比させて言う、ムハンマドは…
ルターが『聖書』を「読んだ」というのは有名な話だ。私が初めて意識するようになったのは柄谷行人「テクストとしての聖書」(一九九一)だった。いまは『ヒューモアとしての唯物論』で読める。ややこしいことを言っている。 ひとびとが聖書を読みはじめたの…
吉本隆明とよしもとばななが対談している。一か所だけ、吉本の発言が、読んでいて「ああそうだったか」と昔の彼を思い出させてくれた。 家族や親族というのは、本来一人の男性と一人の女性の性的なつながりから発展した集団で、これは他のどんな社会集団とも…
「文学界」十月号で『世界史の構造』をめぐって、著者柄谷行人が大澤真幸、岡崎乾二郎と鼎談してる。柄谷が日本国憲法第九条に言及してる部分で、ちょうど二〇年前の本を思い出した。岩井克人との対談書『終りなき世界』の最後のところだ。 よく日本は、西洋…
世界史は覇権を持つ国が存在する時期としない時期の交代の繰り返しだった。しない時期を帝国主義的な時代と呼ぼう。各国が覇権を争う時代である。一九九〇年以降はアメリカの支配権が崩れて帝国主義的な時期に入っている。そして、(6)で述べたように資本…
交換様式ABCが互いに支え合う、国家と資本と国民の切っても切れない輪を崩すには、交換様式Dが必要だと柄谷行人は考える。それは普遍宗教が受け持ってきた。しかし、宗教の形をとっていては、そのうちそれは国家のシステムに取り込まれる。(5)で述べ…
国家、資本、ネーション、これらについて、そして、それらの密接な関係について論じた。「ネーション」は以下、「国民」と書いておく。 国家を国家の内側から論じてもわからない。国家は他の国家に対して存在する。そう考えて明らかになる国家の力というもの…
世界帝国は共同体を越えた世界宗教や普遍宗教を必要とする。それ無しでは帝国内の多様な国民を束ねることができない。宗教とは何か。それは呪術とは異なる。呪術は交換様式Aにもとづく。宗教は交換様式Bである。人間は神に服従して祈りを捧げ、神は人間を…
国が唐やローマ帝国ほど大きくなると、もう国家の範疇では理解できない。それは世界帝国である。国や共同体を越えた原理が働く。帝国内の共同体間の交易が大きい。交換様式Bだけでなく、交換様式Cが重要になる。 帝国にはその中核部と周辺部があり、帝国の…
第二部では交換様式BとCが論じられる。「略取と再分配」と「商品交換」だ。両者は不可分だ。それでもひとまづ、前者については国家の発生、後者については貨幣の発生として、分けて説明される。 交換様式Aによって結びついた共同体がまとまってもそれは国…
「序説」で述べた交換様式A「互酬」について論じた。一言で言えば、贈与と返礼である。柄谷行人は氏族社会で代表させている。特に共同体間の互酬が扱われる。たとえば、ある氏族から何かが贈られると、贈られた側はそれを他の氏族に贈らねばならない。つま…
柄谷行人は交換様式として経済をとらえる。 交換様式A「互酬」は贈与と返礼による。私の思いつく例は寺子屋である。先生は読み書きそろばんの知恵を生徒に贈与する。生徒は食材や奉仕で先生に返礼する。長屋のような共同体で成立するものだ。柄谷は数世帯か…