村上春樹『1Q84』Book 3 読書中(その1)

 Book 1、2 までの『1Q84』をまとめれば、主題は「物語」だ。 「がんばれば夢がかなう」とか、「本当の自分を見つけよう」とか、物語とはそういうもので、現代文学理論では軽蔑される。 しかし、どんなに軽蔑しようと、人は物語から逃れられない。青豆や天吾はふたつの月を見てそれに気が付く。自分たちは物語の中で生きているし、その外には出られない。「だから問題は」と村上春樹はきっと考えた、「どんな物語を生きるかだ」。生きるに値する物語を生きるべきである、これが『1Q84』の答えだろう。青豆は天吾のために死ぬ物語を選び、天吾は青豆をさがす物語を選ぶ。さて、私はBook 3 を第9章まで読んだ。いまのところ、Book 1、2 の主題はあまり関係無く進んでいる。
 リトルピープルもあまり見えない。このユング河合隼雄)的な「影」がBook 1、2 のもうひとつの主題だったと思うのだけれど。もっとも、第8章ではマザとドウタが抜き差しならぬ存在になりつつある。私はドウタが「影」を受け持つと思っているのだ。ただ、マザもドウタもまだ一回しか名が出ていないから、何もわからない。