長月の一番、「新潮」9月号、舞城王太郎「Shit, Brain Is Dead.」

 砂漠に派遣されたアメリカ兵たちの話である。任務が変わってる。指定された場所に着くと、アメリカ女が居る。民間人だ。彼女はそこで深い穴を掘る作業の指揮をとっている。何のために?夫を探すためだ。行方不明になった夫は何日も砂中を移動しているという。予想ではこの地点を通過しそうだから、穴を掘って夫を待ち受けるのだ。穴掘りを手伝うのがアメリカ兵たちの任務だった。
 これだけで十分とんちんかんな設定である。そして、状況はさらに不可解になる。穴の中で時間も空間も生も死も混乱してくる。穴の外に出てもはっきりしない。「俺ら、やっぱり死んでるのかもな」なんてセリフまで出る。読者としては、生きることの意味も無意味も混乱してくる。「きれいはきたない」みたいな混乱だ。俗語をまき散らしたセリフの応酬が、雑な口調と深刻な内容をごっちゃにして、その感じを効果的に演出している。