井上太郎『ハイドン&モーツァルト弦楽重奏曲を聴く』ほか

 難波のジュンク堂に出かけた。大きな書店に行ったのは年末の神田が最後だから、久しぶりだ。井上太郎『ハイドンモーツァルト弦楽重奏曲を聴く』を買うためである。ネットで注文するのがもどかしかった。前著『ハイドン106の交響曲を聴く』の愛読者としては当然であろう。クラシック音楽の棚に行くとすぐ見つかった。『106の交響曲』よりも大きめの判である。ところが、開いてみると活字も余白も大きい。無駄な気がした。おまけに、印刷されてる部分は、三分の一から二分の一ほどが楽譜の引用だった。井上はそれにありきたりの解説をちょろっと付けるだけ。なにこれ?詐欺では?CDの解説の方が読みごたえがある。もちろん買わなかった。ちなみに、ハイドンモーツァルト弦楽四重奏曲に関しては、井上和雄の名著がある。特にハイドンが良い。ベートーヴェンもあり、三部作になっている。
 憤然として奥の棚に移るとそこは写真集だった。ここに寄るのは昨年に城林希里香『Beyond』を買って以来である。今回は石塚元太良が気に入った。世界各地のパイプラインを撮ったり、神田川やら日本橋川やらをカヤックで下ったり、ちょっと変わった人のようだ。一九七七年生まれ。私が買ったのは『LENSMAN』(二〇〇九)である。河だか海だか、大きな水を歩いて渡る不思議な白い人が表紙で、これに惹かれた。嫁に「これ何だろうね」と訊いたら、「海女でしょ」。もう一人は澁谷征司の『BIRTH』(二〇〇八)と『DANCE』(二〇一〇)である。後者は絞首台が気にいったが、この人独特の静かな雰囲気は前者の方がよく出ている。買うなら『BIRTH』だった。