城林希里香『Beyond』

 書店で久しぶりに写真集の棚をのぞいてみた。今年のものでは、藤岡亜弥『私は眠らない』の表紙が衝撃的であった。祖父の頭部を真上から撮ったようである。悩んで、別の一冊、城林希里香『Beyond』を買った。画面のほとんどが空である。下の方、4分の1か5分の1くらいに地平線や水平線が走っている。そんな構図ばかりだ。風景によるマーク・ロスコと言えようか。こういうのは好きだ。淡い色調もいい。1993年に大学卒業というから、いま四〇歳くらいか。これが最初の写真集らしい。旧作を検索すると、2002年の連作「メメントモリ」が見つかった。その一枚が、水平線を垂直にしたような構図で、やはり画面は淡く、余白たっぷりで、これは作風なんだろう。追記。原園綾という人の四回にわたる紹介記事が便利だ。それによると、「メメントモリ」は亡くなった友人の部屋が空っぽになった様子を撮ったものらしい。