小谷野敦

小谷野敦『現代文学論争』(その2)

私の記憶では、スペースシャトル・チャレンジャー号の事故は日本でも中継されていた。見ていたと思う。キャスターは久和ひとみで、これは間違いない。シャトルが分裂する間、しばらく無音の時間が流れていた。私は「これは事故なのかな」と思った。久和の何…

小谷野敦『現代文学論争』(その1)

「まえがき」に、臼井吉見『近代文学論争』の「後を受けるもの」とある。最近の論争についてもそんな本があればなあ、とかねがね思っていた。ありがたい。それにしても臼井のあれ、どこにやったか。もう二十年以上も前に勉強で読んでそれっきりだ。それでい…

「新潮」9月号、絲山秋子「作家の超然」(1)

母ががんになった体験記などいつもは読まないけれど、たまたま私の近親者にがん患者が続けて出たので、「文学界」九月号の小谷野敦「母子寮前」を最初の方だけ読んだ。肺がんの場合、3センチが手術できるかどうかの目安になるそうだ。ほか、やっぱり同じ立…

小谷野敦『中島敦殺人事件』

何年も前に中島敦『山月記』は研究論文をいろいろ読んだ。クレス出版『中島敦『山月記』作品論集』(2001)を使った。木村一信の作品論がそれまでの研究史の成果の積み重ねの上に立つ到達点で、これを超えるものはなかなか出ないだろう、と思った。主人公李…

新潮昨年11月号、飯塚朝美、週刊朝日6月26日、東浩紀

あなたを望んで産んだわけではない、と親に言われた娘の気持はどんなだろう。少なくとも、親はそんなことを言うべきではない。しかし、往々にして文学新人賞の選評にはそんな文句が現れる。しかも、親の眼に映る子ども像の多くは実像であるのに対し、選考委…