師走の一番、庚寅の一番。

先月は仕事で忙しく、年末から正月は帰省で忙しかった。本はあんまり読んでない。何度挑戦しても挫折するドゥルーズ、ガタリ『アンチ・オイディプス』を一〇〇頁ほどでまた挫折した程度だ。「器官なき身体」って、なんなんだ。今回の印象だと、エヴァンゲリ…

更新さぼりがちのある日。

梅田のTOHOでトラン・アン・ユン「ノルウェイの森」を観た。あまりに凡庸な映像である。ほんとうにこの監督は「夏至」を撮ったことのある人なのか。本当は同姓同名の「水戸黄門」のスタッフがいて、そいつが作ったのではないのか。 もういい。この話はやめよ…

十年前の「新潮」臨時増刊と「文学界」を読んだ。

十年前は三島由紀夫が死んで三十年だった。「新潮」が臨時増刊を出した。アンケートがある。1、「三島由紀夫」が好きですか、嫌いですか。それは何故ですか。2、自決後の30年間はどういう時間だったと思いますか。3、三島作品のベストワンは。(ごく簡単…

文月の一番「すばる」7月号、荻世いをら「彼女のカロート」

お墓のメンテナンスをするのが主人公の仕事だ。有名人からの依頼がある。ニュースキャスターの女性だ。と言っても、彼女はここのところ休んでいる。耳が聞こえなくなったからだ。主人公の仕事内容よりも、彼女の症状に小説の主眼がある。 彼女が有名であるの…

新訳新釈ドストエフスキー『罪と罰』亀山郁夫、三田誠広

亀山郁夫による新訳が出たので『罪と罰』を二十数年ぶりに読み返した。昔の読書をほとんど覚えていない。若い私はマルメラードフの露悪的な端迷惑に嫌悪感をつのらせるばかりで、飛ばし読みだったのである。ところが、いまや五〇歳に近い私はマルメラードフ…

冨永昌敬『パンドラの匣』(太宰治原作)

冨永昌敬「パビリオン山椒魚」はひどかった。新人が映画をなめた、ありがちの駄作だった。二度とこの監督の映画は見なくていいという確信を得られたのだ、決して金と時間の無駄ではなかった、そう自分を納得させて帰路についたものだ。太宰治「パンドラの匣…